アッパートラッスルズ
15年ぶりに川が開いたアッパートラッスルズの河口の波。長いレギュラーの波はボードテストに最適な波だった。

“Naoto vs Rick Rock”  Vol.3

AM8:00 02/Mar/2010 Upper Trestles San Clemente California

California『San Clemente サンクレメンテ』,ここはlost surfboards,Timmy paterson,Cole surfboardsなどの一流シェーパーが集まり、 最先端のショートボードのデザインが生み出される『最先端基地』。サンクレメンテの代表的なポイント『トラッスルズ』はWCTの大会が行われるほどの波のクオリティーを誇る世界有数のポイントとしても知られている。このポイントで各ボードメーカーは優秀なライダー達と共にボードテストを繰り返し最新のボードデザインを発信してきた。
Narai surfboardsのメインシェーパーである『Rick Rock リックロック』もサーフボードデザインの最先端をいく超優秀シェーパーとしてこの地をベースに 精力的に活動している。トラッスルズの1キロ南にある”アッパートラッスルズ”は15年ぶりの地形で連日、大変なにぎわいを見せていた。
『Naoto!!一緒にサーフィンしようぜ!』とリックから連絡を受けて、朝一でアッパーへ向かうと弱いオフショアのカタ〜アタマサイズのレギュラーの波が 規則正しくブレイクしていた。ボードテストを行う絶好のコンディション!!お互いに波に乗り、テクニック、ボードの走りを確認する、、、ボードデザイン の進歩はこの繰り返しによって生み出される。セッションを終えてリックのファクトリーに向かい更にボードミーティングを行った。

R(Rick) Hey,Naoto!!今日のアッパーは良い波だったな!!

N(Naoto) 今日の波は日本の河口のような波だった!!久しぶりに良い波に乗ったよ。

rick and naoto
Rickと一緒に海へ入りボードの性能とライディングを確かめ合うことで新たな発想やボードデザインが生まれる。

R先月、アッパーの河口が15年ぶりに開いて今の地形が出来上がったんだ。Naotoはラッキーだぞ!!

Nレギュラーの波で4~5回アクションが出来て、100mもロングライドが出来るなんて夢の様だった。ボードの調子も最高だったよ!!ボードテストには最適な波だったね。

RNaotoのいいライディングを見たよ。とてもスムースでレール・ツゥー・レールの切り返しは速かった!!

N今回乗っていた2010年のNEWモデル『Moduleモジュール』のコンセプトを教えて。

R『Moduleモジュール』は通常のショートボードと昨年から大好評のミニボードの中間にあたるボード。簡単にいうと”大きな波から小さい波までカバーできるボード”ということ。 ミニボードの幅と厚さを残しつつ、ショートボードのシャープなノーズ幅と細いテール幅をミックスさせたモデルと言えば分かりやすいかな。

Nミニボードは昨年から調子が良くて、いつも乗っていたけど波がムネ、カタサイズを越えるとレールを入れることが難しくて、ターンが伸びない事が度々あった。 波が大きい時にショートの6’1″に乗り換えるとレールターンは容易だけれども、ボードが長くなった分レールが長くて動きが少し鈍くなってしまう。 これらの問題点を解決したのが『Moduleモジュール』なんだね!!良く理解出来るよ!!

R一本のボードですべて波を乗りこなす事は不可能だからね。でも日本の場合、普段の波のサイズは”ヒザ〜コシ””1ヶ月に数回カタ〜アタマサイズ”でしょう。 そういう意味では『Moduleモジュール』は日本の波に適したボードと言えるね。

N『Moduleモジュール』はノーズとテールエンドが細くシャープにデザインされているから、ボトムターンからトップへ上がる時は鋭角に上がるし、 トップでの返しはテール幅が細いから軽く素早く返せる事が出来たよ。ボードの長さはどのくらいがお勧めかな?

R基本的には5’5′”(165cm)〜6’0″(183cm)がお勧めだね。ボードの長さはミニボードより少し長く、ショートボードより短くが『Moduleモジュール』 のコンセプトにぴったりだね!!カリフォルニアのライダー達にもこのボードは大好評だよ!!

Module

Nカリフォルニアのライダーは増えたの?

R最近、若いライダーが増えたよ。ハワイから移り住んだ二人の姉妹、あとナショナルチームに入っている男の子がチームライダーになったんだ!! 彼らは若くて才能があるからボードのフィードバックが正確に伝わってくる。ボードデザインを構築するには頼りになる存在だ。日本のライダー達はどう?

NNARAIの若手ライダー『鈴木祐介』はRickの『BLASTERモデル』に乗って昨年の地元のサーキットで年間ランキング優勝を獲得したよ!! これで2年連続の優勝。彼はとても上手いサーファ-だから地元では良いアピールになっている。

RNARAIのライダー達もがんばっているね!!NAOTOとのリレーションシップで日本の波に適したモデルを数多くリリースしてきたことはとても重要だね!! 日本とカリフォルニアは波質が似ているからボードデザインを考える上でイメージしやすい。NAOTOはボードについて熟知しているからフィードバックを受けるとすぐに伝わるから、次々によいアイデアが浮かぶんだ。

N今年も凄いボードマテリアル(素材)を考えだしたね!!R210-Composite(アールツーテン・コンポジット)はどんな構造なの?

R昨年まで使用していたR-TypeのパラボリックレールのPVC&XTRを取り除いてボトム、デッキにPU-White Sheetをレールに巻き込む事に成功したんだ!! R-typeのレールは強くて頑丈でいいんだけど、よりフレックス性能を出したかった。パラボリックを取り除く事で、よりフレックス性能が増してターンが伸び、トップでの返しも柔軟にねじ込るはずだ!!

R210-Composite

N確かにR-Typeに比べて、ターンが軽く,速く感じたね。R-Typeも素晴らしいけどR210-Composite(アールツーテン・コンポジット)はさらに上を行くね!! ボードがしなるから少しの力でボードが反応する感じ。厚い波の時にパンピングをしなくてもボードを軽くプッシュすれだけでボードは自然に走っていく。

R以前から『ボードのフレックス性』についてNaotoには何回も語ってきたと思うけど、ボードはこれが重要な意味を持っている。 近年、頑丈で丈夫なモールドボードが人気があるけど、あのボードは全く柔軟性がないからターンが途切れ、途切れになってしまう。レイトテイクオフの時もボードが硬いから、 もろにボードに衝撃が伝わりバランスを崩すんだ。最近はこれらの事に多くのサーファーが気がついたようでモールドボードのシェアは大きく下がっている。

Nそう考えるとR210-Composite(アールツーテン・コンポジット)は『フレックス性能』『強度性能』両方に優れた画期的なボードと言えるね!! デッキ、ボトムに装着したホワイトシートは強度があって1年経っても少しの凹みしか見当たらない!!そして黄ばみにくいから白い状態が長持ちする。

R今年からデッキの3レイヤー(三層構造)に工夫を凝らしたよ!! MARKO FOAM(マーコフォーム)に4オンスのクロスを巻いてその上にホワイトシートを装着し、 さらに4オンスのクロスを巻くんだ。ホワイトシートをサンドイッチすることで更に強度が増すんだよ!!そしてホワイトシートをボトムまで巻き込む事でレールの強度を守れる訳!!

N素晴らしい構造だね!!この工法は今までに見た事も聞いた事もない。Rickのオリジナルな工法だね!!R210-Composite(アールツーテン・コンポジット)に加えて又新たなカーボンを編み出したね。

RCarbon Matrix (カーボン・マトリックス)はカーボン繊維をクロスさせる事でテーン時にボード全体に足の力を平均的に分散させる事でバランスよくボードがしなり爆発的なターンの伸びを見せるんだ!!

N最初にボトムに施されたクロスされたカーボンを見た時には正直驚いたよ!!でも俺はRickが考えたCarbon Matrix(カーボン・マトリックス)の理論がすぐ読めたよ(笑)

R長年リレーションシップをしているから俺が考えている事がNAOTOにはすぐに分かってしまうんだね(笑)

Nもちろんこのような発想は自分には思い浮かばないよ。でもデザインを見ておそらくこんな発想でボードを作ったんだな〜とはすぐに感じる。

Carbon Matrix

Rテストした感じはどうだった?

N実は昨日のアッパートラッスルズは今日よりもいい波だったんだ。アタマからアタマ半のサイズがあるのレギュラーのパーフェクトな波で R210-Carbon Matrix(アールツーテン・コンポジット・カーボン・マトリックス)5’7″(170cm)のボードを使ったけど、ひと言でいうと『Amazing アメージング!!』。 サイズがあるのにボトムターン時にボードはフラつかず安定していてスープから飛び出す様にターンが伸びた。ボトムターンで力をためて一気にトップへ向かう時の感覚を簡単に表現すると 『発射台からロケットが一気に飛び出す爆発力』に似ている。トップでの返しも軽快でカットバックのねじり込むターンが凄い伸びたのが印象的だった!!

R『発射台からロケットが一気に飛び出す爆発力』これはいい表現だ(笑)

NRick!!本当だって!!一本凄く良い波に乗ってトップターンからボトムに降りて波に合わせてダブルターンをしたんだ、 通常ならターンが途切れ途切れになるけど、そのターンは1本につながってスムースに素早くトップに向かいクリティカルセクションのスープにきれいに乗り上げてボードは軽く返ってきた。 これは今までにない感覚だったよ!!あのライディングを見ていたサーファーはおそらく驚いたと思うよ!!Carbon Matrix (カーボン・マトリックス)の素晴らしさをすぐに体感できた事が本当にうれしかった。

R早速インプレッション(感想)を聞けて良かった!!自分の考えていた構想通りのことが実現出来たんだね!! ケリーやジョディー・スミスにCarbon Matrix (カーボン・マトリックス)のことを教えてあげようかなぁ〜(笑)

N他のメーカーのカーボンはノーズからテールにかけて真っすぐに1本入っているのに対して、Rickの考案した Carbon Matrix (カーボン・マトリックス)はクロスさせているところが独特だね!!あのクロスさせたカーボンのアイディアは本当に素晴らしいと思うよ。

Rいつも寝る前にボードデザインについて考えるんだ、あーすればどうか?こーすればどうか?、、、、、。そして突如として凄い発想が生まれる!! これを俺は『Midnight Inspirationミッドナイト・インスピレーション』と呼んでいるんだ!!

Nいつもいつも前向きにボードデザインを考えているから、良い発想が思いつくんだね!!これからも『Midnight Inspirationミッドナイト・インスピレーション』に期待しているよ(笑)

RNaoto,これからも俺に任せてくれよ!!

ミーティングを終えて

Rick Rock

相変わらず前向きで明るい『Rick Rock』。サンクレメンテというショートボード激戦区においてその実力をしっかりとアピールしていることに誇りを感じた。 Lost surfboardsから独立してはや3年。1〜2年は思う様に行かずに焦っていたようだが、3年目に入りオーダーが急激に増加している。 ファクトリーには連日、ボードの進行状況を確かめるたくさんのカスタマーが訪れていた。その頻度は約30分おきに!!アメリカは大不況にも関わらず、Rickのオーダーは上がり続ける。 いったいどういう事か?それは『実力がある本物は生き続ける』ということ。どんな苦境や境遇にあっても『REAL(リアル) 本物』はぶれないのだとRickを見て感じました。 少し前に、ヒットソング”Fire Files”を歌う『Ocean Eye』のインタビューで『あなたは夜寝る時に何を考えますか?』との問いに『寝る前は次の音楽の事を考えるんだ!! 深い眠りの前にはインスピレーションが湧くんだよ。自分の音楽はほとんどこのパターンで作られているんだ!!』これはまったくRick Rockと同じ発想!! 天才的ミュージシャンなど創作するすべてのアーティストは同じ感性を持っているのだなと感心すると共にRickのアーティストとしての素質を感じたのでした。

Rick Rock Profile

リック・ロック・プロフィール

  • BirthFeb.18,1966
  • Start surfing1974
  • Start shaping1982
  • 16,000+Shapes complete
  • WorkedStussy,T,Patterson,Lost surf boards,Steve Boysen,HOBIE,McElroy,Slick(LongBoards)
  • FactorySanClemente California U.S.A

カリフォルニア大手サーフボードメーカー”Lost”から2007年に独立。地元サンクレメンテでRICK ROCK SURFBOARDSをプロデュースする一方、NARAI SURFBOARDSのシェーパーとして 世界最新のボードモデルを日本に紹介している。直人プロとのミーティングによって生まれる日本の波用にチューニングされたボードは、地元伊豆で絶大なる人気を得ている。

リックは、現在に至るまでにLost,Timmy Paterson,Steve Boysen,Slick Meyer,Braian Clark(BC)などオレンジカウンティーSanClementeの一流シェーパーの元で技術を学んできました。 また、Meyhem,Timmy Paterson,Coleとは、とても仲が良くお互いの持つ技術をシェアし合いサンクレメンテのサーフボードインダストリーを世界最高水準レベルに引き上げています。 また彼は、インダス トリアルデザイナーをやっていた時期があり、創意工夫してプロトタイプを作る事を得意としている為、他では考えがつかない斬新なデザインを次々とリリースしています。 2002年に鈴木直人プロとカリフォルニアで出会い、日本の波と体型に合ったボードデザインをふたりのコラボレーションによって作り上げ、伊豆から発信しています。

過去のインタビュー

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