【インタビュー】

シェイプを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
シェイプを始めてもう15年ぐらい経つのだけど、きっかけは“自分の削ったサーフボードで波に乗りたい”ということが理由。自分のサーフボードを作ってもらうためにシェイパーを探す旅もして来たのだけど、自分で作りたいと思い始めてね。すぐに行動に移すタイプだから、まずハワイに2ヶ月間行ってね、仲の良いジェフ・ブッシュマンにシェイプを教えてほしいと連絡を取ったんだ。売れっ子のシェイパーさんだから忙しくてなかなか教えてもらえなかったのだけど、通っているうちに少しずつ教えてもらって。シェイプの基本は、ジェフに教えてもらったんだ。それから日本に帰って来て始めたんだよね。お店もやっているからなかなか多くは作れないのだけど、たくさん注文もらったよ。それから東日本大震災が起きて、お店も大変な時期があってシェイプは少し休んでいたのだけど、ここ数年でまたやり始めたんだ。
シェイプの最初の1本はどうでしたか?
自分なりのサーフボードができて、ちゃんと乗れたよ。サーフボードは高い物だし、すぐに他の人のサーフボードを削るのは無責任だと思ったから、自分のサーフボードを削ることを積み重ねていって。その中で大事な出会いがあったんだ。
それはどんな出会いだったのですか?
ロックダンスのシェイパーの松本光ニさんに湘南で偶然会ったんだ。松本さんは昔から仲良くさせてもらっていて、自分のサーフボードもたくさん削ってもらっていて。「何してるんだ?」って聞かれて、「シェイプをしているのだけど、まだまだ修行が足りないから教えて下さい」って言ったら「いいよ」って。それから松本さんにシェイプで最も重要なことを教えてもらったんだ。
松本さんとの出会いが大きかったのですね。
松本さんに出会ったことで日本の波に合ったサーフボードのシェイプを知ったんだ。アウトラインとか、レールのこととかいろいろ教えてもらって感謝しかないね。それから自分がイメージしているサーフボードが削れるようになっていった。今まで外国人が削ったサーフボードにたくさん乗って来たのだけど、それらはどうしても外国の大きい体型の人を対象にしたものだから、自分の中でもう少しこうしたいなっていうものがいつもあって。そこに松本さんの理念が自分の中に入って来て、外国人のシェイプしたサーフボードとその理念を自分の中でまとめたものが自分のシェイプするサーフボードの形になったんだ。出会いがすべてだなって、今シェイプしてても思う。

サーフボードのコンセプトを教えて下さい。
日本人の体型に合った、日本の波に合ったサーフボードかな。そういうコンセプトをメインに、ショートボード、フィッシュとかミドルレングスのレトロボード、ロングボードなどいろいろなサーフボードを削っているよ。昔削ったロングボードを取り出して乗ってみたらすごく調子良かったから復刻させたんだ。
その他に特徴をあげるとしたら?
一番の特徴は、自分がとにかくサーフィンをして、サーフボードをたくさん試しているということかな。それで感じたことを反映させたサーフボードを作っているんだ。
直人さんご自身ヴィンテージボードに乗っていますよね。集めているのですか?それらもシェイプに関係していますか?
友人からヴィンテージボードを譲り受けて、自然と集まって来てね。実はヴィンテージボードに乗ることで新しいアイデアが生まれて来たりするんだ。先人たちのデザインにはいつもリスペクトしている。
サーフボードの対象者はどんな人でしょうか?
オールラウンドです。その人に合ったサーフボードを作る。オーダーしてくれた人のサーフィンを見てシェイプするよ。パドルから乗るシーンを見て、前体重か、テール体重かをチェックして。それからシェイプするのがカスタムシェイプの極みだよね。地元のサーファーもたくさんオーダーしてくれているのだけど、最近、同級生や先輩がまたサーフィンやりたいとお店に来てくれてね。その人たちのサーフィンはだいたい見て知っているので、それを元にサーフボードを削ってね。出来上がったサーフボードで一緒に海に入ったんだけど、その人たちがそのサーフボードで今まで乗れなかった波に乗れている姿を見た時はたまらなくうれしかったね。
ライダーもいらっしゃいますよね?
先日僕のサーフボードのライダーが伊豆のエキスパートオンリーのリーフで乗って、調子が良かったという報告をもらってね。伊豆はビーチブレイクもあるけど、世界に誇れるリーフで滑ってテストもできるんだ。そういう素晴らしいフィールドがあって、いろんな波でサーフボードを試せるのがいいんだよね。
最後にシェイパーの思いを聞かせて下さい。
僕はサーフィンをしたい。その時間を大事にしているんだ。自分のサーフィン技術もキープしながらサーフボードをテストし続けたいと思っていて。今まで世界中の有名なシェイパーのサーフボードを30年以上世界中の波で試して来たんだ。そこで感じて来たものを自分の削るサーフボードに集結して注ぎ込んでいる。自分がイメージするものを形にして、それを乗り手が証明してくれるんだ。だから自分の感性を“いかに表現できるか?”であって、それで最終的にみんなが楽しめればいいと思っているんだ。

Interviewer : Yuriko Yonechi