環境に配慮したボード作りを信条とする、ウッドサーフボードを制作するシェイパー”ダニー‧へス”
サーフボードという枠を超えてウッド芸術品としてカリフォルニアで高い評価を受けています。
先月ヘス‧サーフボードのBOXモデルを購入した”SALTYさん”からインプレッションが届きました!
ヘス‧サーフボードの素晴らしさを文章から感じてください。
『サンフランシスコから来た美しすぎるサーフボードとの運命の出逢い...』
2015年という年は私にとって節目となるというか、いつまでも記憶に残るような、そんな年となりました。
桜が散り、短い春の終わりと初夏への想いに心が揺れ動くような、そんな季節に差し掛かったと感じ始めた頃から、本当に大切な人とのいくつかの永遠の別れが突然訪れたり、自分の力ではどうにもならないほどの不可抗力な出来事や理不尽な出来事がいくつも訪れたりと、大げさに誇張することなく、本当に人生は何たるかということを真剣に考えずにはいられないような日々が、まるで切れ目なくやってくるドセットのように次々と私生活の中に訪れたからでした。
今となって冷静に考えてみると、40代の「後厄」という節目の歳を迎えたことによって、「何かあるのは当たり前だよ!」と、想えるようにはなりましたが、やはりこの人生のドセットをなんとかやり過ごすには、私には海へ行き、サーフィンをして浄化してもらうことが本当に必要であり、またそれが、私にとっては一番の「厄払い」であるということを、初夏から夏にかけてやってきた台風連弾がもたらしてくれた、いくつかの記憶に残る素晴らしい波に出逢い、そしてその波に乗ることによって、あらためて思い知らされる結果となりました。
「なんだよぉぉぉ~!やっぱりサーフィン最高じゃん!!」てな具合に...。
それでも本当に今年の仕・私生活におけるドセットの波は半端ではなく、何度も心が折れそうになったのは紛れもない事実でして、「完全なる厄払い」を望む私にとって、まだなにかの「ワンピース」が足りてないような想いの中、終わりの見えない怒涛のドセットを喰らいながらの日々を、粛々と戦い抜いていました。
そんな時に、幸運にも私は、その足りない「ワンピース」に巡り逢ってしまったのです...。
それはサンフランシスコで生まれ、遥々海を越えてやってきた、もう全てが信じられないくらいの美しさに溢れたサーフボード。
私はそのサーフボードを一目見ただけで、足りない「ワンピース」の形が完全に一致するだろうと確信し、そして実際にそのボードを手に持って抱えた瞬間、私の求めていた「ワンピース」が寸分も狂いがなく「カチリ」とハマる音が、どこからともなく確かに聴こえた瞬間にもなりました。
これを運命の出逢いと言わなければ、何を運命の出逢いと言うのでしょうか?...
『ウッド、EPS、エポキシ、そしてカーボンレール...すべてが斬新で美しい!それはまるでアート!...』
今回私が手にしたHess Surfboards The Box 5’6” は、EPSフォームにデッキ側にウッドシートを重ね、レイル部分にはカーボンが施されてあり、ラミネートはエポキシで仕上げられているボード。
たったこれだけ書いただけでも、どれほどの手間を掛けて製作されているか、サーファーなら誰でも容易に想像できると思います。
更にその素材の使われ方が、よくよく見てみると細部に至るまで非常に手が掛かっていることも解ります。
そしてそれらが実にバランス良く融合され、たとえばデッキ側の木目の使い方にも理にかなった組み合わせ方が見てとれるデザインとなっていて、それがそのまま実用的になっているという、素晴らしすぎるアイデアが施されているのです。
そのような細部まで手を掛けたアイデアとセンスと技術が融合されたバランスの良さが、視覚的にこのボードを、より斬新でそしてしびれるほどに美しく際立たせているのではないのでしょうか。
そして、実際に手に持てば誰もが感じ取れるほど、Danny Hessが創造したこのサーフボードは、シェイパーとしてはもちろん、匠の職人技としても完璧な仕事を魅せてくれていることが解ります。そしてその実用性を兼ねたトータルバランスの素晴らしさは、職人の技を超えた先にある、「アート」の領域まで達しているのではないのでしょうか。それほどまでに本当に美しく、アートなサーフボードなのです。
『ハイパフォーマンスな乗り心地と、初めて知る感覚と悦び...』
てなわけで、今回もずいぶんと長い前置きを書いてしまいましたが、一応これはインプレッションなので、肝心な乗り心地を私なり(大変恐縮なのですが)に書いてみましょう。
実際に私を知る人であれば、どんな波のコンデションであれ、ずっとミニシモンズ(Wegener Mini Simmons Diamond Quad)を乗り込んできていることを知っているので、Wegenerと比べてその乗り心地を検証すると説明し易いのですが、今回はHess Surfboardsの魅力を多くの人に知って欲しいので、なるべく誰が読んでも解り易いように努力して書いてみましょう。
先ず前途して書いた通り、今回私がセレクトしたボードはHess Surfboardsの The Boxというタイプで、長さは5’6”。パッと見、アウトラインはミニシモンズ系のタイプなのですが、細部を良く見てみるとレイルのシャープな落とし方、ノーズ部分、テール部分の薄さ、そして形状、ロッカーバランス、どれもがWegener Mini Simmons Diamond Quadと比べて以って異なるデザインとなっていることが解ります。
しかし、基本形状はミニシモンズ系であるので、その乗り心地は大して変わらないだろうと、私は思っていました...が、実際に海に入って乗ってみると、その乗り心地の違いに大変驚かされる結果となりました。
やはりというか想像していた通り、テイクオフしてからのレイルのくい付き方が半端ではなく、波の斜面のホローな部分をより加速しながら進む!進む!更にその取り回しのし易さは普通のショートボードとなんら変わらず、ハイパフォーマンスな動きで、動く!動く!
そして一番驚かされたのが、ウッドの持つ独特のフレックス特性なのか、ボトムからのボードの上がりの伸びが鋭いことなんのって。まるで乗り手が「行きたい!」と思う感情を敏感にこのボードは感じ取ることが出来るかのように、先に先にと進みたがる動きをしてくれます。この感覚は私も初めて体験するほどの凄すぎ感覚です。
実際この手のボードによくある、取り回し辛いぎこちなさみたいなものは、レイル形状がシャープになっているため、その違和感みたいなものは全くなく、逆にレイルを入れ込み過ぎないようにすれば、素晴らしい滑走感がその先に待っているのだと感じました。
やはりサーフィンの最大の魅力は何と言っても「確かなグライド感を風と共に躰で感じること」だと私は常に想っていますが、そういった意味でこのHess Surfboards The Box 5’6”は、私にサーファーとして一番の悦びを与えてくれるボードと言い切れます。
そしてこれは少し余談になるかも知れませんが、フィンボックスが5つあるマルチフィンシステムが採用されていることにより、波のコンデションによって、ツインにしたりスラスターにしたり、そしてクアッドと、事実私はいろいろなフィンセッティングを試しながら楽しんでいますが、そんなところも含めて、あらためてこのボードは「サーファーを悦ばせることに本当に長けているんだなあ!」と、感動したくらいです。
『最後に、Hess Surfboardsのことを少し...』
Danny Hessが提唱するサステイナブルなサーフボードとは、「壊れずにずっとそばに置いて使い続けたいボード」であり「地球にも自然にも優しいボード」でもあります。それはサーファーなら誰もが気にするボードの耐久性のあり方であり、地球の自然環境に対する大切な心使いなのです。その当たり前だけど決して簡単ではないことを、匠のクラフツマンとしての尊い思いと信念を形にして、一本一本丁寧に創りあげられたものが、しびれるほど美しい姿をしたHess Surfboardsなのです。
しかしどんなに美しくても、幾多のアート作品のように、波に乗らずに鑑賞用などにすることは絶対にしてはいけません。至極当然、当たり前なのですが、サーフボードは波に乗ってこそ、シェイパーがボードに込めた意図や魂を感じ、そこからまた新しい命が宿るのですから。そしてそうすることによって、乗り手を含めた普段のサーフィンそのものが本当の意味でのアートの完成となり、Danny Hessが望むように、私たちの次の世代にも美しいまま乗り継がれていくことが可能になるからです...。
気が付けば、サーフィンを続けてきてから二十数年以上経った今でも、私は素晴らしい波とボードとの出逢いに新しい感覚を気付かされては悦び、更にはどうにもならないくらいの現実の厳しさを、サーフィンから与えられるデドックス(解毒)効果とプリフィケーション(浄化)作用に何度も救われて来ました。
ただそれは、「心から楽しめる」ということがあって、初めて成立することでもあります。そのためにはサーフィンをするうえでなくてはならない「サーフボード」の選択は、一番重要になるのは言うまでもありません。
私の場合はこうして歳を重ねるにつれ、「とにかく楽しみたい!」という思いが、900hPaの台風並みの強さに発達しているため、そんな思いを確実に叶えてくれて、尚且つ自分が求めるサーフィンのスタイルが確実にできるようなサーフボードをセレクトして、心から海で楽しんで乗り込んでいます。(そんな私のわがままな願いに、いつもタイミング良く答えて頂ける直人さんには感謝の言葉しか見当たりません!)
こんな私のように「余裕のない大人」でも、海で大いに楽しませてくれるHess Surfboardsは、「余裕のある大人」の方であれば、なおさら楽しめることは間違いないでしょう...。
ずっと美しいままのお気に入りのサーフボードでずっとサーフィンをして、そしてずっと楽しんでいられる...そんな夢みたいな奇蹟的なことを、Hess Surfboardsは私に与えてくれました。
これできっと、私の「厄」は完全に取り払われることでしょう!!...
と、美しい紅葉に彩られた天城の山路の風景に時折目を奪われながら、そんなことを想って海へと車を走らせていました...。さぁ、この美しい山路を越えると、今度は冬の冷気に綺麗にシェイプされ、まるで宝石のように美しく輝く伊豆の海と波が、私たちサーファーの訪れを待っています!!...。
私のつたないインプレッションがどれくらい参考になるかわかりませんが、最後まで読んでくれてありがとうございました。皆さんの「Surf for Life」も大いに幸ありますように...。