Vessel Model / Impression

ヴェセル・モデル / インプレッション

「鳥になれる…」

海を大空に例えて…自分が大空を自由に羽ばたく鳥になれるようなサーフィンができるボードがあったら?…そんなサーフボードのお話しです。

事の始まりは数年前に開催された「旧板会」。
先輩(直人プロ)が所有する貴重なヴィンテージボードを様々な角度から感じる事ができるイベント。ビーチにズラリと並んだヴィンテージボードはどれもシングルフィン、まるで「曲がった事が大嫌いな頑固おじいさん」のようで、当然試乗した感想はどれも自分の技量では「重い!曲がらない!」ようするに全くコントロールできない。
頑固おじいさん達は「どーした小僧?」って微笑みもしない(半泣き)。当時のものとはいえ、こんなにもシングルフィンって難しい?気難しいものなのか?。

しかしそんな中に一本…優しくてとても親しみが湧くアウトラインの黄色いボード。先輩に「これって?」とたずねると「1970年代のINFINITY…乗ってみろ!」。
今思えばその時に何か根拠のない期待を抱いたような…。INFINITYでパドルアウト、皆のいるラインナップに着くとすぐさま友人が形の良いセットを譲ってくれた「ボブGO!」Takeoff!。
根拠のない期待は見事に的中した!INFINITYは僕がイメージしたラインを心地好く駆け抜けてくれたのだ!。

そう!頑固おじいさん達の中に一人だけ「なんでも笑顔で叶えてくれる田舎の優しいシングルフィンおばあちゃん」がいたのだ!。数本クルーズしてるうちに気付いた…なんだろ?「長年乗り続けたツインフィッシュのフロウな感じとは全く違うざらつきの無いクリーンなスピード…」。僕の中に完全にシングルフィンへの探求心が産まれた瞬間である。こうなると次にこのボードに乗りたい仲間達の待つビーチに僕が戻るわけがない!(笑)。呆れた先輩が取り上げにきた…そして取り上げた先輩もビーチに戻らずINFINITYでクルーズandストークでビーチに戻らず…イベント終了後はアッという間に僕に見つからない場所に隠したのはナイショの話(笑)。

episode2

「どーやって隠されたINFINITYを入手するか?」。まずは得意とするしつこい「おねだり」…回答「ダメ!」。しばらく悶々としながら考えた。そーか!先輩にシェイプを依頼しよう!。しかしここで事件は起きた!。なんとシェイパー(先輩)の返事は「イヤだ!」。
ここで皆さんに問題です!「突拍子もないアホな形状ならともかく、オーダーを断るシェイパーっています?」。答え「います!(鈴木直人氏)」(笑)。ただし断り続けるだけでなく、「これで腕を磨け!」と先輩のシングルフィンボードを授けてくれた感動秘話はナイショの話。

episode3

乗り親しんだツインフィッシュを封印していつになく真剣にシングルフィンボードと向き合って一年が過ぎた…もちろん自分なりに理解できた事は先輩に「熱く語る」という事は欠かさない。僕の野望は消えやしない「あのボードに乗りたい!」。
そんなある日の先輩からのLINEはコメント無しの「シェイプルームから」的なphoto。それにはたった今シェイプを完了した美しいラウンドピンテールが写っていた。イイなぁ…誰のかなぁ?。僕→「誰の?」先輩→「オメーのだよ!」僕→「えっ?」先輩→「楽しみだねぇ(笑)」。

それが「NDS」モデル名「Vessel」。
約20年僕のしょーもないサーフィンを見続けてくれている先輩が、長年の経験や知識を生かしてあの「INFINITY」をまさに「ボブスタイル」(笑)に仕上げてくれたスペシャルプロダクトだ!
シェイプの技術と豊富なアイデア、そしていつもサプライズが強烈なのはナイショの話。

episode4

まだ夏か?ってくらい太陽ギラギラな青空の秋の午後に先輩とのセッション、波は小ぶりだが形の良いのがたまに来る。いつも新しいボードは先輩がテストライドしてアドバイスをくれる恒例である。VESSELに乗った先輩は「ネオクラシックなボードで力むのは粋じゃない」とばかりにリラックスしながらもボードはスムースに加速していくのを楽しんでいる、そしてシングルフィンならではのシンプルなラインに時折アクションと言うアクセントを織りまぜ綺麗なスプレーを上げている。「あんな風に力まずクリーンで自由自在なのは…」なんて思いながら眺めていた僕に満面の笑みでアウトに戻ってきた先輩がこう言った「ボブ、これは最高だ!鳥になれるぞ!」。
そう、先輩のサーフィンは大空を自由に舞う鳥のようだった。かと言って僕が先輩のように美しく舞えるはずがない…それでもあのクリーンなフィーリング、シンプルな構造ゆえの奥深さを堪能し、自分なりに大空を舞う事ができてる気がする…不細工な鳥だとしても…。

最後に…ラインナップで横にいた先輩が「やっぱコレ俺が乗ろうかなぁ…」って言ったのを必死に聞こえないフリをしたのは本当に絶対ナイショの話(笑)。